かなざわの人物 喫茶去 その2
茶去(キッサコ)とは悟りの心を意味するようです。唐代(中国)、趙州(チョウシュウ)の観音院に住む従念*禅師という高僧がいました。
禅師は客が来ると「以前来たことがありますか?」と尋ねる、「いいえ、初めてです」と答えると、「喫茶去」と言う。「前に来たことがあります」と答えても、禅師は同じく「喫茶去」と言いました。つまり「では、まずお茶を召し上がれ」と言ったわけです。
1200年前の話です。これを「茶禅一味」と称し、茶の奥儀に到達することは、禅の奥儀を極めたことに等しいということだそうです。仏法は日常茶飯の中にあるという教えもあるようです**。
陸羽の精神と同じとも言われます。『茶経』(760年頃成立)は陸羽が著わしたもので、茶の歴史・製法・器具について記述した最古の書です。古くは「荼」(ト・ダ)、唐代以降「茶」が使われ普及しました。ジャ・チュアン・メン・トゥが、のちに茶や茗(メイ)に置き換わったようです。茶の利用が漢民族より複数の少数民族の方が先行して飲まれていたからと言われています。チャは慣用音で、漢音はタ、唐音はサです。ツバキ科の常緑低木で、10月頃白い花が開きます。
*正しくは言偏がある念。
**『茶事遍路』陳舜臣(1988年)より
(井上泰利)