かなざわの人物 飛鳥部吉士五百国

アスカベノキシイオクニ 生没年不詳  奈良時代8世紀の人。

 武蔵国橘樹郡(横浜市北部・川崎市辺り)に住む五百国が、久良(岐)郡に来て、現在の金沢区富岡・鳥見塚付近で、白い雉を捕らえました。祥瑞(めでたいことの印)として朝廷に献上しました。これは『日本書紀』の次に編纂された六国史のひとつ『続日本紀』神護景雲2年(768)6月21日条に記述されています。 五百国は身分を表す「吉士(吉志)」を名乗っています。これは朝鮮半島における首長号に由来し、飛鳥部氏は百済からの渡来者であったことがわかります。
 実は白雉の献上は、この時が初めてではなく先例がありました。『日本書紀』白雉元年(650)2月に穴戸国(長門国・山口県)から白雉献上の記事があります。天皇に献ずる儀式が行われ、穴戸国の調役(繊維製品などの税)が3年間免除されました。おそらく久 良(岐)郡からの献上の時も、天皇の前で儀式があり租税が免除され褒美を賜ったこと でしょう。これ以後も肥後国・豊後国から白い亀、但馬国から白い雉、備後国から白い鷹などが度々朝廷に届けられましたが、記述は簡単で数行程度です。橘樹郡と久良(岐)郡、8世紀の古代人の往来がわずかに偲ぶことができます。

(井上泰利)

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